Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「ただ、あいつが、当たり前みたいにおまえを自分のモンって考えてる言い方したから気に入らなかっただけ」
涼太に言われ、やっぱり客観的に見てもあの言葉はそういう意味合いでとれるのか……と思う。
もし……もしも、宮地本人もそういう意味で言ったのなら。どういうつもりなんだろう。
いつかの飲み会で話題にあがったみたいに、付き合うつもりはないけど他に持って行かれるのも嫌だとかいう、そういうこと?
だとしたら。そんなひどい仕打ちはない。
「あいつなんだろ。おまえが盛大に失恋した相手」
唇をギュッとかみしめていると不意に言われ耳を疑った。
「え……」と顔を上げれば、いつの間にか涼太がこちらを見ていて……その、からかいのない瞳に、ふっと力が抜ける。
嘘をついても無駄だって悟ったから。
涼太にじっと見つめられることに私は昔から弱いなぁ、と諦めながら「そう」とうなづいた。
十九時半の夏空には細かい星が散らばっていた。
人通りは少なく、通る車もない。
「バレてたんだ」
それぞれの家庭からわずかに漏れてくる生活音と、遠くを走る電車の音。
耳障りではない程度の雑音のなか、わずかに笑う。
「まぁ、あれだけ菜穂と話してたら嫌でも聞こえたりするもんね」
涼太の前では話題に出さなかったけれど、注意してバレないようにしていたわけではないし。
ただ、涼太が恋愛関係の話題を嫌いそうだから避けてたってだけで。
「ああ、でもそっか。私が宮地に失恋したって知ってたから、あんな風に言ってくれたんだ」
『それとも、ただの同期が恋愛まで口出しすんの? そんな権利もないくせに』
涼太からすれば、宮地の態度が随分勝手に思えたんだろう。
私を恋愛対象に見ないくせに、独占欲は出すのかって。……それについては同感だけど。