Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
宮地と涼太と色々あってから一週間とちょっと。
涼太とはケンカしたわけでも気まずいわけでもないから、あれからも普通に話している。
私が〝変な視線を感じる〟って話したからか、涼太はたいがい駅で待っていてアパートまで送り届けてくれる。
口では『おまえ見て楽しんでるって、相当なマニアだな』とか毎回バカにするのに、飽きもせず毎日毎日待っていてくれる。
相変わらず素直じゃないけど優しい。
……本当に、たまにくじけそうになるくらいに口は悪いけど。
そして、宮地ともなにもなく過ごしている。
あの夜感じた違和感は私の勘違いだったみたいで、宮地は翌日から普通に接してきた。
一応、涼太の態度を謝ると、『あー、いや、気にしてない』と明るく言ったあと『昨日見て思ったけど、やっぱり向井弟って美形だよな』なんて笑ってたから、なにも気にしていないんだろうと胸を撫で下ろした。
それから……そこに、安心すればいいのか傷つけばいいのか、複雑な気持ちになった。
だって、たぶん宮地は私と涼太がキスしたのを見ていたのにそんな反応なのかって。
わかっていたことでも、やっぱりショックはショックだった。
それでも、以前ほど気持ちが沈んでいかないのは、涼太の前で思いきり泣いたおかげかもしれない。
あの涼太にあんな風に慰めてもらったんだから、と気持ちが切り替えられるようになった。
失恋した、ということを自分でしっかり受け止められたってことかもしれない。
もういつまでもめそめそしてないで前を向かないとって、そんな気持ちだった。
「で、まだ変な視線って感じるの?」
土曜日の十二時。
菜穂と外でランチをするのは久しぶりだ。大体がどちらかの家ってことが多いから。
場所は駅前に新しくできたカフェで、ケーキの種類が豊富だって話題のお店だ。
窓際のテーブル席。丸いテーブルの向こうから聞いてきた菜穂にうなづく。