Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「うん。でも、何かされたわけでもないし、私の気のせいなのかなぁ。疑心暗鬼っていうか」
窓の外の通りを人が行きかう。
土曜のお昼だけあって、カフェの中同様、外の通りも賑やかだった。
この駅の周りは飲食店が多いから余計かもしれない。
「失礼します」と店員さんがそれぞれの前にランチプレートを置く。
きのこクリームがたっぷりとかかったハンバーグの隣には、水菜やレタスのサラダがのっている。
そこにパンの食べ放題とドリンクバー、そしておすすめケーキ三種盛というデザートがついて1600円だから安いと思う。
パンは八種類くらいから選べるプチサイズで、菜穂と私のお皿にはすでにみっつのパンがのっていた。
時間制限もないし、長居してしまいそうだ。
軽く頭を下げて店員さんが離れていくと、菜穂は私にフォークを差し出しながら「でも、そこまで何度も感じるって気のせいではないと思うけどなぁ」と納得いかなそうする。
「だってもう何週間もでしょ?」
「うん」
フォークを受け取り、お礼を言う。
ハンバーグを小さく切り分けると肉汁が溢れ、そこをきのこのクリームソースが流れ落ちる。
ふっくらとしたハンバーグは柔らかく、口の中に入れるとほろほろと崩れクリームソースと混ざる。
「あ。おいしいね」
予想以上だったからか、びっくりした様子の菜穂にうなづく。
「うん。おいしい。これ、ソースにチーズも入ってるのかな。涼太とか好きそう」
「ああ、かもね。今度誘ってこよっか。たまに会っておいて様子を知らせないと親がうるさいんだよね。
……あ、うるさいと言えば、最近、お父さんが私と涼太に恋人がいないことに危機感を覚えてるみたいで、それもうるさいけど」
少し面倒くさそうにする菜穂に「そうなの?」と聞くと、大きくうなづかれる。