Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「別に、恋人がいなくて騒がれるような年じゃないのにね」
その通りだなぁと思っていると、菜穂が続ける。
「涼太、全然家に連絡入れてないみたいでさー。まぁ男だしそんなもんかもしれないけど。でもだからって私に涼太のこと聞かないで欲しいよね。私だって涼太とそんな会うわけでもないのに」
「そう? 結構会ってる気がするけど……」
「知花が一緒じゃなきゃまず会わないよ。姉弟で会ったってたいして話すこともないし。前回会ったのも、うちで三人でケーキ食べたときだもん」
菜穂がハンバーグをぱくっと口に放り込む。
その様子を眺めながら〝三人でケーキ食べたのっていつだっけ……〟と考える。
涼太が濡れて帰ってきたし、たしか梅雨明け前だったはず。
「え……あれって半月以上前だよね? それっきり会ってないの?」
私は涼太と週に半分以上は顔を合わせているだけに、驚いてしまう。
家を出た姉弟は一般的にもそんな頻繁には会わないのかもしれないし、普通のことなのかもしれないけど……。
フォークの先にひと口サイズに切ったハンバーグを刺したまま止まっていると、菜穂は付け合せのレタスを食べながら「たった半月やひと月でしょ」と呆れた様子で言う。
「うちは、知花もいるし、借りてるアパートも近いからまだ会う方だよ。
普通、家を出てる姉弟なんてお盆とかお正月とか、節目節目でしか会わないんじゃない? シスコンブラコンでもない限り」
「そうなんだ……。でも、そっか。そうだよね。私だって月に一度家族に顔見せればいい方だし」
そんなもんなのか、と納得しながらハンバーグを口に運んでいると、菜穂がなにかを思い出したように「あ」と声を漏らし、明るい顔を向けた。