Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「……変な聞き方しないで。気にはなってるよ。今まで涼太、そういう話なかったし……相手の子、いい子だといいなって思うし……」
口を尖らせながら言った私を、涼太はしばらく見ていた。
でも、そのうちに目を逸らす。
屈むのも止めて、距離ができたことにわずかに胸を撫で下ろしていると涼太が言う。
「勝手に言い寄られてるだけ」
ぽつりと零された言葉に「え?」と聞き返すと、涼太は窓の外を眺めたまま答える。
「何度も迷惑だって言ってんのに全然聞かねーから、面倒になって放っておいただけ。
日曜は駅前の本屋で鉢合わせて、ついてきたけどすぐ追い払った。部屋知られんのも気持ち悪いし。変な誤解してんな」
ふん、と気に入らなそうなトーンで話す涼太に、「あ、そうなんだ……」と咄嗟に言ってから、ホッとしている自分に気付き、疑問が湧く。
涼太がきちんと説明してくれたから安心しただけ?
それとも……〝なにもなかった〟っていう内容に、安心したの……?
涼太はちゃんと説明してくれたのに、私の胸の中はもやもやとしたままで……浮かんだ疑問をぐるぐる廻らせながら電車に揺られることになった。