Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「付き合うって……だって、直感でいいなって思わなければありえないんでしょ? 一度仲良くなってからは考えられないって言ってたじゃない」
宮地に〝好きだ〟って言われたにも関わらず、胸はドキドキしていなかった。
むしろ、さっきまでの緊張はなくなっている。
夢みたいな展開を前にして、なぜか頭も気持ちもスーッと冷静さを取り戻していた。
だって……こんなのは、違う。
見つめて聞いた私を見て、宮地は困り顔で笑う。
「俺も今の今までそう思ってたけど……イレギュラーなこともあるのかもな。まぁ、今までがそうだったってだけで、これから先もそうだってわけじゃないし。
唐沢が前言ってたとおり、環境が変われば価値観だとか考え方も変わるってことだろ」
「でも……」
「それに俺、唐沢から好きなヤツがいるって聞いてからずっと唐沢のことばっか考えてる」
立ち上がった宮地が私に近づく。
そして、目の前に立つとにこっと……私の大好きな笑顔を浮かべた。
「だから、俺の恋人になって」
それは、待ち望んでた言葉だった。
ずっと、そう言われないかなって……言ってほしいなって、望んでた言葉なのに。
なんで〝違う〟と思うんだろう――。
いつも通りの柔らかい雰囲気。
いつも通りの笑顔。
好きで堪らない宮地が目の前にいるのに……私を好きだって言ってくれているのに。
なんで、涙が溢れるんだろう。
身体を屈めてキスしようとしていた宮地が、私の涙に驚き目を見開く。
「……唐沢?」
至近距離から聞いてくる宮地の肩を押し返し……すれ違うようにしてブランコから立ち上がった。
そして、宮地を振り返り口を開く。