Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「なんで、恋人なんて言うの……? 私のこと、恋愛対象として見られないくせに」
責めるような口調になった私に、宮地はわずかに笑みを浮かべ言う。
「いや、だから、それは今までの話で……」
「宮地が私みたいな重たい気持ち、苦手だって知ってる。今は、それでもいいって本気で言ってくれてるのかもしれないけど、そんなの一時だよ。
涼太とのこととか見て、おかしな競争心が芽生えちゃっただけで……それは純粋な私への気持ちじゃない。そうじゃなきゃ……〝好きだ〟って言葉が、あんなに軽く聞こえるわけない」
ずっと聞きたかった言葉がもらえたのに、嬉しいと思えなかった。
それは、そこに想いが籠っていなかったからだ。
私の宮地への気持ちを揺すぶるくらいの熱がなかったからだ。
告白をされて、改めて宮地との恋愛観の違いを実感していた。
「欲しいと思ってた言葉……そんな軽く言わないでよ。私の〝好き〟は、宮地の言う〝好き〟とは違うんだよ。そんな軽く口にできないくらい、重たい。
それを宮地はわかってないんだよ。だから、そんな簡単に〝好き〟なんて……」
ポロポロと涙をこぼしながらも笑みを浮かべ見ると、宮地は驚きを顔中に広げた。
何も言えずにいる宮地を見て続ける。
「なのに……宮地が本気じゃないって、きっとそんな感情、一時だってわかってても、それでもいいから彼女になりたいなんて……一瞬、考えて揺れた。ほんと、最低……すごい自己嫌悪」
そんなことしたところで、仕方ないのに。
一時でも宮地の特別になれるならなんて……夢を見てしまった自分に、涙を溢れさせながらふっと笑う。
「ごめん。宮地。頭冷やす」
すん、と鼻をすすり背中を向けると、すぐに「唐沢……」と呼ばれたけど、振り向かなかった。