Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「ごめんね。来週までにちゃんと普通に接せられるようにしとくから。……ひとりにさせて」
ハッキリと言い、一歩踏み出す。
そのまま公園を出て駅に向かう。
宮地は私の言うことを聞いてくれたみたいで、後ろを追ってはこなかった。
歩きながら、目尻に溜まった涙を指先で拭う。
もうそろそろ駅前の道に出るから、さすがに泣きながら歩くわけにはいかないと、気をしっかり立て直す。
好きな人に、好きだって言われたのに……まさか、こんなに苦しくなるなんて思ってもみなかった。
……想いの重さの違いなんて気付けないくらいに鈍感ならよかった。
こんなに……好きにならなければよかった。
目の奥からこぼれ出ようとする涙を必死に堪えながら、ひとり、電車に揺られた。
「おい」
最寄駅につき、ぼんやりとしたままアパートへの道を歩き出そうとしたとき、横からぐいっと腕を掴まれた。
驚いて顔を上げると、眉を寄せた涼太が私を見ていた。
「ここで待ってろってメールしたろ。なに帰ろうとしてるんだよ」
「あ……ごめん。スマホ確認してなかった」
支店近くの公園に行くまでは気にしていたけど、そこからはすっかり忘れてしまっていた。
バッグからスマホを取りだし確認すると、たしかに涼太からメッセージが届いていた。
【遅くなった。そっちまで行けないから家の最寄駅前で待ってろ。パン屋近くの、明るいとこ】
ぶっきらぼうなメッセージの受信時間は十九時四十分。今から十五分前だった。
私の配属されている支店からここまで四駅に対して、涼太は二駅だから、涼太の方が先に着いたんだろう。
駅周りには、パラパラと帰宅途中のサラリーマンやOLが見て取れた。
それをぼんやりと眺めていると「……おい。大丈夫か?」と聞かれるから、ハッとする。