Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「……バカップルって言われたよ」
泣きすぎて、掠れた鼻声になっている私を抱き締めたまま、涼太は「知らないヤツにどう思われようがどうでもいいだろ」と言う。
耳の辺りで聞こえる声がくすぐったい。
涼太が、右手は背中に回したまま、左手で私の頭をぐっと抱き寄せるから、頬を伝っていた涙が涼太のYシャツに吸い込まれていく。
「涼太、Yシャツが濡れちゃう……」
「おまえがあさましかったら、世の中の女全員そうだ」
突然言われた言葉に驚いていると、もっと大変なことを告げられる。
「俺は、おまえみたいにいい女は他に知らない」
本当に涼太の口から出た言葉だろうかという疑問を浮かべずにはいられなかった。
だって、顔を合わせればチビだのなんだのって言ってたし、暴言だっていつもひどい。態度だって横柄だ。
それでも……今告げられた言葉を嘘だと思わなかったのは、いつも涼太の眼差しや言葉の隅から優しさを感じ取っていたからだろうか。
そこに特別な想いを、感じていたからだろうか。
見ない振りなんてできないほど、大きくて強い想いを。
そう思った途端、ドキドキと騒ぎ出した胸に呼吸が震える。
でも、身体越しに伝わってくる涼太の心臓も速くて……背中や頭に回った腕に、骨張った肩に、体温に、切なくなってしまう。
涼太の想いが響いてくるようで。
「……もしかして、今、口説かれてる?」
誤魔化そうとは思わなかった。
でも、確信がないだけに聞くと、涼太は私を抱き締めたまま「今頃気付いてんのか」と呆れた声を出す。
それから、一拍置いて続けた。