信じることはとても愚かで美しい。
あー…さっきそれで竜が叩き出され…
「ぐえっ」
蓮も竜と同じ運命をたどった。
それがおかしくて。
麗と顔を見合わせたあと、プッと噴き出して笑ってしまった。
お腹を抱えて笑っていると。
「うん、やっぱり菜緒はそのほうがいいよ。」
「え…?」
唐突に言われた言葉に思わず聞き返す。
「菜緒、最初ここに来たとき、敵意丸出しで。でも、意外と笑うんだね!絶対、今のほうがいいよ!」
その言葉とともに向けられた微笑みが心にスゥっと染み渡った。
今まで、私を肯定してくれる人がいただろうか。
双竜にいたときは、嫌われないように必死に笑って。
友達には陰口を言われて利用されて。
お母さんには成績のことしか言われなくて怒られて。
そんな中にいたから、いつの間にか本当の自分が分からなくなってた。
だけど今。
自分の思うままに笑っている。
それを肯定してくれる人がいる。
これほど幸せなことがあるだろうか。
些細なことだけど。
私には、とてもとても…
幸せなものだ。
「ありがとう。」
零れた言葉と共に出た笑顔は、最高の笑顔だった。