信じることはとても愚かで美しい。



「こいつは…双竜の元姫だ。」


蓮が唐突に言った言葉に倉庫はさっき以上に騒がしくなった。


そして、向けられていた視線は興味を示した目じゃなくて。


…あの日向けられたのと同じ…疑いの目だ。


ドクンっとあのときの光景が、またフラッシュバックする。


過呼吸になりかけたとき。


ポンポンっと頭を二回。


優しく、優しくたたかれた。


思わず蓮のほうを見ると、優しく笑いかけてくれてて。


なぜか、落ち着いた。


それと同時に、違うドキッという音が聞こえて。


…どうしたんだろ、私。


心に甘い感情がじわじわと広がる感覚がある。


そのことに疑問を感じつつ、ここで負けたらだめだ。


そう、自分に言って。


そう思うと自然と前を向けた。


それを見た蓮は、話しを続ける。


「こいつの名前は篠原 菜緒。双竜の元姫だけど、俺らはこいつを信じるって決めた。」


“信じる″


そう言いきった蓮。


じわり…。


凍った心が少しだけ…溶けた気がした。





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