俺様御曹司とナイショの社内恋愛
第2章/敵もさるもの



中小企業が多くテナントに入っている、ビル街。
株式会社Otomotionも、そんな街の一角にあるビルにフロアを構えていた。

建物の外観は古びているけれど、何年か前に改装されたのか、内部はまずまず清潔で近代的に整えられている。
Pタイル、フロアカーペット、内装用化粧シート・・・郁は住宅環境部出身の目で、改装工事の内容を見てとる。

白石とエレベーターで4階へ上がる。
受付で訪問を伝え、パーテーションで仕切られた応接スペースで待っていると、すぐに中年の男性がやってきた。

乙女ゲーム制作会社なのに、男性があらわれたことを、意外に感じている自分がいる。
交換した名刺に目をやると、〈チーフディレクター 雪瀬 透〉とあった。

ひょっとして芸名なのか、なんだか二次元っぽい。

「ゲームキャラの名前じゃないですよ、本名なんです」
照れたように、雪瀬が笑ってみせる。

本人はいたって普通の中年のサラリーマンといった容貌だ。格好もワイシャツにネクタイ。
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