俺様御曹司とナイショの社内恋愛
ちょっと実演してみます、と白石だけが平然と立ち上がる。

絶句中の郁の二の腕をつかむと、立つようにうながす。背後にはパーテーション。

なにを、なにを・・・・・?

ダンッ!!

「きゃあっ!?」

顔のすぐ前に、スーツに包まれた彼の腕。ひじを折った白石が、腕ごとパーテーションに強く押しつける。パーテーションとかぶさってくる白石の体に、完全にはさまれたかっこうだ。

き、消えてしまいたい・・・なんで人前でこんな・・・
恥ずかしさといたたまれなさに、ひたすら身を縮める。

「———こんな感じ、どうでしょうか?」
白石が首をひねって、二人に問うている。口調は相変わらず平静そのものだ。

「うん、うん」

返ってきたのは、なんとなるみ女史の肯定の言葉だ。

うそ・・・勇気をふりしぼって、白石の腕のかげから二人の様子を見る。

雪瀬となるみ女史が、こちらを凝視している。その目に、揶揄や嘲笑の色はなかった。
仕事をする人間としての、真摯で冷徹な眼差しだ。
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