それはちょっと
――僕の彼女になりなさい

振り返ってみると、衝撃的過ぎて何も言えない。

心臓がドキドキと激しく脈打っている。

「――初めてだったのに…」

恥ずかしながら２５年間の人生の中でキスしたことはおろか、誰かと１度も交際をしたことがない。

なのに、キスしてくるなんてあんまり過ぎる。

「何のジョーダンだ…」

部長に振られた女性社員のマネをするつもりではないが、彼があんな人だったとは思わなかった。

スマートでスタイリッシュで、仕事もできる完璧な部長があんな男だったとは予想もしていなかった。

エレベーターが１階に止まってドアが開いたのと同時に、私はその場を後にした。

「明日からどうすればいいんだろう…」

会社に行くのが怖い、部長と顔をあわせるのが怖い――そう思ったら、頭痛を感じた。
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