それはちょっと
「南くんの誕生日だから、南くんの欲しいものを言えばいいよ」

部長が言った。

「私が欲しいもの?」

「時計とか靴とか指輪とかネックレスとか」

全部高いものばっかりじゃないですか。

そう思ったけど、彼に言う答えは1つである。

「ありません」

私は言った。

その答えに部長はキョトンとした顔をしたけど、すぐにクスリと口元を緩ませた。

「南くんらしいと言えば、南くんらしいね」

どうやら、私が先ほどの答えを言うことは彼にはお見通しだったみたいだ。

「本当に何か欲しいものはないの?

ああ、ものじゃなくてもいいな」

思い出したと言うように言った彼に、
「何ですか?」

私は聞き返した。

ものじゃなかったら、何がいいんだろうか?
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