それはちょっと
そう思って聞いたら、
「赤よりも白の方が君にピッタリだと思ったから」

部長が答えた。

「そ、そんな理由ですか?」

思わず言い返した私に、
「君への誕生日プレゼントなんだから」

部長が言った。

「私のって…」

部長から目をそらすように、白いバラの花束に視線を向けた。

誕生日を知ったからと言う理由でプレゼントしたいなんて言ったうえに、渡すために住所を調べたと言う用意周到さである。

部長はバカなのだろうか?

それとも、好きな人にはとことん尽くす主義なのだろうか?

「ああ、忘れてた」

そう言った部長の手が私の頬に添えられたかと思ったら、クイッと上を向かされた。

端正なその顔立ちが近づいてきたかと思ったら、
「――ッ…」

唇が重なった。
< 32 / 90 >

この作品をシェア

pagetop