それはちょっと
…ああ、忘れていた。

部長は口寂しいからと言う理由でキスをする人だった。

それに気づいたのと同時に私の唇に触れていた部長の唇が離れた。

「今日は何も言わないんだね」

そう言って唇の両端をあげた部長に、
「――く、口寂しいからってキスをするのはやめてください!」

ハッと我に返って私は言い返した。

しまった、状況に飲み込まれている場合じゃなかった!

「今のはそんな理由でキスした訳じゃないよ」

部長がクスクスと笑いながら言った。

「はっ…?」

じゃあ、どんな理由でキスをしたって言うんだ?

そう思っていたら、
「南くんがかわいかったからキスをしたの」

部長がそう答えたかと思ったら、私の頭のうえに手を置いた。
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