それはちょっと
本当だったら断っているはずだった。

でもどうしたこのような状況になってしまったのだろうか?

「はい、ブラックでいいんだよね?」

部長が私の前にカップを置いた。

「ありがとうございます…」

私はお礼を言うと、湯気が出ているカップに息を吹きかけた。

コーヒーの香りが漂っているカフェで、私は何とも言えない気持ちに包まれていた。

「てっきり断られるんじゃないかと思ってた」

部長はそう言うと、カップに口をつけた。

「まさか、こうして買い物にもつきあってくれたうえに一緒にお茶もしてくれるとは思ってもみなかったよ」

部長は嬉しそうに、フフッと笑った。

そう、私は首を縦に振って返事をしてしまったのだ。

部長は窓の外に視線を向けると、
「南くんは、クリスマスはどうするの?」
と、聞いてきた。
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