それはちょっと
「私もわがままですから」

その音を彼に聞かれまいと、私は言った。

「ふーん、わがままか。

まあ、わがままな女の子は嫌いじゃないけどね。

むしろ、大好き」

部長はクスクスと笑いながら言った。

「そ、そんなことは簡単に言わない方がいいと思いますよ…」

頬に添えられている彼の手を払うと、私は言った。

「好きな子だから、南くんだから言っているんだよ。

これがもし他の女の子だったらそんなことは言わないよ」

部長は言い返した。

「僕は南くんのことが好きだから言っているだよ」

「そうですか…」

それに対して私は呟くように返事をすると、カップに口をつけた。

苦いはずのそれに甘さを感じたのは、私の気のせいだと思いたかった。
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