君を愛した時間〜残した宝物
「っの野郎!はぁーはぁー、俺はセラを諦めない!プッ!」
俺は、倒れこんだ直の横に向かって唾を吐いた。
「フッ…無駄だ、お前はセラを諦めるしかないんだよ!」

《何で、こんな事に!!…セラ、逢って話がしたい、お前を抱きしめたい…セラ》


――私は、気が付くと家の前に着いていた…。
門の前で私は、座り込んだ。
「バカみたい…私…」
夜空を見上げた…星も月も出ていない、真っ暗な夜空だ…。
私の目元からは、涙が零れた…。
《心…あなたは、私をからかっていたのね…》
「セラ…」
「直、君…」
「セラ!…俺は、セラを泣かせるような事はしない!セラだけを見て、セラを幸せにする!だから!…」
直君は、座り込んだままの私を膝を付きながら抱きしめた…目を閉じると、直君の想いが伝わってくる。
「直君…私、直君の気持ちを受け入れるように頑張る…」
「セラ!?」
「だけど…少し待っていて欲しいの…気持ちを整理したい、今はまだ、心に…」
「分かった…待つよ、セラの心の中から彼が消えるのを…俺は待つよ」
「ありがとう…」
直君は、頬に流れる私の涙を指で拭い…優しくキスをした。
《心、ありがとう…さよなら…》


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