君を愛した時間〜残した宝物
「全然?どこも?」
「ならいいんだ……」
「ねぇー心…、何で引っ越しなんか?」
「……気分転換だよ……」
《セラ……この海で俺達は出会えた……だからずっと眺めていたかった……って言ったら……、セラお前は迷惑か?……》
「そうかぁ…気分転換かぁ…」
俺は、テレビの上にある時計を見た。
「あっ…、俺仕事行かなきゃ…」
「あっうん、じゃー私も…」
セラはベッドから下りようとした。
「…もう少し休んでいけ…鍵ポストにでも入れといてくれたらいいから…」
俺はセラの手に鍵をのせた。
「あっ…、うん!」
私は、手の中の鍵を握った。
「じゃー…行くから」
「うん…」
俺は玄関のノブを触ろうとした時……。
「心!」
「ん?」
「いってらっしゃい!…」
「…いってきます!」
手を振るセラに見送られながら、俺は部屋を出た。


――「いってらっしゃい……いってきます……毎日、心に言えたらどんなに幸せだろう……」
私は、窓の外から心の背中に手を振った。
「……心」


――《いってらっしゃいかぁ……いいなぁ……》
俺は、空を見上げ暑い陽射しを浴びながら思っていた
《ずっと…このままセラと居れたら……》



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