君を愛した時間〜残した宝物

どのくらい歩いただろうか…気がつくと蝉の鳴き声が耳に入ってきた…。
俺の手を繋いでいた女性が立ち止まった。俺の目の前には、大きな門があった…門の向うには、大きな建物がある、木造の建物だ。
白い傘をさした女性が軽くしゃがみ俺と同じ目線になった、女性の顔は、ぼやけている…。
「心…ここで待ってて」
女性は、そう言って俺の足元に小さなカバンを置き女性は来た道に向って歩きだした…俺は女性が、また戻って来ると思って、その場に立っていたが、女性は二度と俺の所には、帰って来なかった…。
俺は３歳の時に母親に捨てられた…。

「おい！心！…心！」
俺の体が揺れていた…俺の頭の中で聞き覚えのある声が聞こえる…静かに目を開けた。
「眩しい！」
俺は目を閉じた
「眩しいじゃねーよ！おい！」
俺の耳元で大声を出しているのは友達の誠だった。
「うるせー！何だよ！」
俺は、ちょっとイラつきながら起きた
「うるせーじゃねーよ！お前唸ってたぞ！平気かよ！？」
誠は俺の顔を覗き込んだ。「あー、嫌な夢みてた…」そう言って俺は、体に付いた砂を叩きながら起き上がった。