君を愛した時間〜残した宝物
ホームを上がりきった時、電車はゆっくりと動き始めていた。
俺は走り、動いている電車の中を見渡した。
「…セラ…セラ………」
電車の中には、セラの姿が無かった。
ホームから抜け出す電車を、俺は見送った。
「……セラーー!!」


――《!!》
私は、電車の中で心の声が聞こえたような気がした。
顔を上げ、電車の中を見渡し動きだした電車の外を見た。
「……」
心の姿は無かった。


――誰も居ないホームに座り込み、握りしめたネックレスを見た。
ネックレスのチェーンに小さな紙が結ばれていた。
「……」
俺はチェーンから紙を取った。

『心。
今日は、私のワガママを聞いてくれてありがとう…。
本当に嬉しかった…。
少しの時間だったけど…私は幸せだった。
心との初めてのデート…楽しかった。
それなのに、こんな別れ方を許してください…。
心、ネックレス……返します…直接返すのが当り前だけど…私には、できない。
ネックレスが無くても、私達は心(こころ)の友達で居よう…。
心!…心!…声に出して…心の前で心の名前を言いたい…。
…今度、生まれ変わったら私達…ずっと一緒に居ようね…。
さようなら…。』


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