君を愛した時間〜残した宝物
親方に、女を家まで送ってやれと言われ俺は女の後ろを歩き女の家に向って歩いた。
「すみませんでした…」
少し後ろを振り向き頭を下げた女は、右足を少し引きづっていた。
「別に…それより足…痛めたか?…」
「平気です」
公園を通り抜け、坂を上り薄明るい街頭の道を歩く…俺の帰り道だ…。
「あの…ありがとうございます」
「あぁ…」
「仕事中にすみませんでした…」
「親方に言われただけだから」
「でも、ありがとうございます」
「あぁ…家、この辺か?」
「はい、すぐそこです」
「じゃー、行くわ…遅くに家出ない方がいいぞ」
俺は来た道に向って歩きだした。
「あの!!」
「ん?…」
呼び止められ振り向くと女は、俺の方に向って歩いて来た。
「私の名前…」
「あぁー昼間店で聞いたから」
「聞いた?」
「店のおばさんとおじさん、アンタを呼んでた…耳に残ってたから」
「あっ、それで…」
女は下を向いた。
「じゃー」
「あっ…すみません!」
「ん?」
「名前…」
「俺?」
「はい…心さんですよね?」
「何で?俺の名前」
「お店で、お友達が呼んでいたので…」
女は少し恥ずかしそうに言った。
「あぁ…じゃー」
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