君を愛した時間〜残した宝物
私は、おばちゃんにすべてを話した。
「…直君に対して私なりに努力をしたつもりだった…だけど、思い浮かぶ顔は心…心しか愛せない自分がいる…」
「…セラ」
「お腹の子…心の子を産みたい…」
「分かっているわ」
おばちゃんは、私の手を握った。
「…すべてを捨てたいの…」
「全てを?」
「自分勝手なのは知ってる!けど!…直君の事も心も…」
「セラ!心君まで…」
「しょうがないのよ!!…直君と別れて心の元へは行けない…行きた…くても…許されない…」
「そんな事は!…」
「決めたの!…強く生きるって…強い気持ちでこの子を守るって!!」
私は、おばちゃんの目を見ていった。
「…分かった…」
「…ごめんね…おばちゃん」

次の日、おじちゃんの顔を見に病院に行った。
「おじちゃん?」
病室に入ると、おじちゃんは弱々しい声で、私の名前を呼んだ。
「…セラ…」
おじちゃんの体調は、急激に悪化していた。
手術も抗がん剤もできないままだった。
なんの効果もない点滴をしていた。
「何か飲む?」
おじちゃんの体は痩せ細り、前の面影がなくなってきた。
「いや…いいよ…」
そう言って、おじちゃんは、目を閉じた。
「おじちゃん?」

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