君を愛した時間〜残した宝物
「いらっしゃいませ」
サンタの帽子を被った男性が、笑顔で立っていた。
「あっあの!」
私は、なぜか緊張していた。
「この前は、有り難う御座いました」
「えっ!?」
「お誕生日でいらして…」
≪覚えていてくれたんだ!≫
「はい、この前は無理言って、すみませんでした」
「いいえ!…こちらへどうぞ」
私は、男性の後ろに歩きついていった。
「…ここの席」
男性は、ニッコリ微笑んで椅子を引いた。
私は、椅子に座り海を見た。
≪この席は、心とケーキを……心の誕生日…≫
私の前に、あの時心は、優しく微笑んでいた。
あの時の笑顔…私は、目を閉じて思い出していた。

(何も要らない…お前でいい…俺が欲しいのは、セラの心だ……ずっと一緒に居て欲しい…)

≪ずっと私の、心(こころ)は、心と居るよ…≫

(トン…トン…)
≪!!≫
私は、肩を叩かれ振り向いた。

≪!!≫

「…どうし…て…」
「………」
「…し……ん……なぜ…」「…セラを…迎えにきた…」
心は冷たい指で、私の頬に流れる涙を優しく拭いた。
「………」
「…泣くな」
俺は、ひざまづきゆっくりと、セラを抱きしめた。
「…ごめんな…さい…」


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