君を愛した時間〜残した宝物
私は、お腹に手をあていった。
「…セラ?」
「ん?…」
「本当に…お腹が張ってただけか?」
≪………≫
「うん、そうよ!…何でそんな事聞くの?」
「…ちょっと気になったんだ…もしかしたら他に…」
「セラ!!」
≪!!…≫
静まり返った病院の中に、心の声が響いていた。
振り向くと息を切らして私の元へ心が駆け寄ってきた。
「心!?どうしてここが!…」
「家に…帰ったら!お母さんが!…セラが居ないって!…」
≪………≫
「お腹が張って、心配で来ただけだ…安心しろ」
直は、俺の肩を叩いていった。
「本当か?!」
俺はセラを見た。
「本当よ…心配掛けてごめんね」
「…なら、いい…良かったよ何もなくて…」
心は、私を抱きしめた。
≪…ごめんね…心…≫
セラを抱きしめた俺は、セラの後ろに居た直を見た。
「………」
直は、俺から目をそらした。
「………」
≪…直…≫




私達は、一言も話さずに家に戻り食卓を囲み、いつもと同じように食事をした。

≪………≫
「…ちょっと煙草吸ってくる」
「うん」
外に出た俺は、携帯電話を手に取りボタンを押した。
(…ピッ…ピッ…)
ボタンを押す指が震えていた。

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