君を愛した時間〜残した宝物
持っていた買い物袋が地面に落ちた。
私は、しゃがみ両手を地面につけた。
「…助けて…誰…か…」

「…セラ?」
地面が歪む中で私を呼ぶ女性の声が聞こえた。
「……沙……羅……さん…」
私は、朦朧としながら歪んで見える沙羅さんに向かって手を伸ばした。






――いつものように現場から事務所に着いた時だった。
「心!電話だぞ!」
事務所の窓から親方が顔を出し言った。
「あっ!はい!」
俺はヘルメットをとって事務所に向かって走った。

(ドンッ!)
「あっごめん!」
俺は、仕事仲間と階段でぶつかった。
「おい!心、落ちたぞ!」
「えっ?」
振り向くと仕事仲間が、セラとお揃いのネックレスを持っていた。
≪セラ…≫





「はぁーはぁー…セラ!」

俺は、首から外れたネックレスを握りしめながら、無我夢中で病院に向かって走った。
(心!セラが倒れたのよ!早く来て!!心!?聞こえているの?心!?)
「…倒れた…」
(…もしもし!?セラが倒れた!今直ぐ来い!!)


電話口で叫ぶ沙羅の声と直の声が、俺の頭を割るような叫び声だった。



長い廊下を走り病室の扉を開けた。
(ガチャッ!!)
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