君を愛した時間〜残した宝物
私は、小さな子どもをあやす様に心を抱きしめ頭を撫でた。
「…もう一度入院して検査をしよう!」
「…………」
セラは、笑顔で首を振った。
「セラ…」
「…検査も入院も手術もしない」
「なんで!!何でそんな事を!!もう一度、松村先生に!…」
「もう、いいの…」
セラの顔からは、笑顔が消えず、ずっと優しい笑顔を俺に見せていた。
「…もう、いいって…諦めるって事か…」
「…諦めるとかじゃない、私は、心とセイラの傍から離れたくないだけ…」
「……セラ」
俺は、強くセラを抱きしめた。
――あの夜から私は、セイラに宛てた日記を書き始めた。
セイラ、貴女が物心が分かる頃私は、セイラの傍には居ないけど、ごめんなさい……。
セイラの初恋を私は、この目で見てあげる事は出来ないけど、素敵な恋をして欲しい。
辛い恋も有るかもしれないけど、恋を楽しんで欲しい。
いつまでも、私はセイラを青い空から見守っているから。
――「セラ、イルカを見に行かないか」
セイラを抱きながら心は、突然私に言った。
「……うん」
ハンドルを握る心は、無口で、何かを考えて居るようだった。