君を愛した時間〜残した宝物

セラの目には、涙が浮かんでいた。


≪…セラ…泣くな…≫


≪…心…ずっと…傍に居たいよ…≫





――「心…」

ソファーで座っていた俺の後ろから、セラが呼んだ。

「ん?」

振り向くと、セラは綺麗なブルーのワンピースを着て立っていた。

≪…!……≫

「…どうかな…似合っているかな…」

セラは、恥ずかしそうに俺に言った。

「…似合っているよ…綺麗だ…」

「足を無くしてから、初めてなんだ…ワンピース…」


「あぁ」

心は、私を優しい目で見ていた。

「…綺麗な洋服を着て、心とセイラとお母さんと写真を撮りたい…家族写真を…」

「………」

≪セラ…≫

「…ダメかな…」

心は、私から目をそらし下を向いた。

「………駄目…」

「えっ…」

「…な、わけないだろ…」


心は、立ち上がり私の前に立った。

「…心、嫌なら…」

≪!?≫

心は、私を抱きしめた。


「…撮ろう…家族写真…」


「うん…ありがとう」



その日、俺達…家族は、海で家族写真を撮った。

写真に写るセラは、海の輝きに負けないくらい、綺麗な笑顔で、セイラを抱き微笑んでいた。

< 326 / 356 >

この作品をシェア

pagetop