君を愛した時間〜残した宝物
――「あっ!!」
強い風でお弁当の袋が海に落ち波に流されていった。
「どうしよう…」
私は流された袋を見ていた、雨がひどくなり大粒の雨が降ってきた。
「しょうがない、謝ろう…早く帰らないと!」
私は、半分残った、お弁当を抱きしめ早歩きで歩きだした。

――俺は走って来た道を引き返した、雨と風で前に進む事が困難だ、俺は額に手をあて少しでも前方を見えやすくした。
「きっつぅー!」
顔に付いた雨を拭い前方を見た。
「居た…」
俺は全力で走った。
「おい!!」

――雨と風の中で声が聞こえた…私は、追い風に押されながら前方を見た。
「…誰…?」
前から、男の人が私の方に向って走ってくる。
右足を庇いながら私は走り、男の人との距離が縮む。
《あっ…》
(ドクッ!ドクッ!)
私は立ち止まった。
「…心さん」
「おい!早く来い!」
俺は、びしょぬれになって立ち尽くしているセラの左腕の手首を握り走りだした。
「あの!!」
「走れ!」
私の左腕の手首を握っている心さんの手を見つめ心さんの背中を見て走った。

――俺は無我夢中でセラの手首を握り締めていた。
「痛い!」
握り締めていた手首が雨で滑り離れた。
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