君を愛した時間〜残した宝物
――朝、起きると雲が厚く、小雨が降っていた…。
「雨…」
昨日の夜の出来事から、私は嫌な胸騒ぎで中々眠れなかった。
「憂欝…」
おじちゃん、おばちゃん達より早く朝食を終え、私は支度をして先に家を出た。
《おじちゃん…、何を考えているの?不安だよ…》
濡れた坂道を、私は滑らないよう気をつけながら、慎重に歩いた。
踏み切り迄来ると、潮の匂いがきつくなった、海は、波が荒れていた…。


――昼飯を食べ終わり、休憩所で俺は、煙草を加えながら考えていた…。
《今の仕事パチ屋… もっと、的もな職に就かねぇーと、何も変わんねぇーな》
俺は、煙草を消し休憩所からホールに出た。
「心!」
「おっわっ!」
ホールに出た途端、女が抱き付いてきた、女の顔を見ると。
「沙羅!お前何でここに?!」
「心!やっと見付けた!」
ホールに居る店の奴らと客の視線が冷たかった。
「放せ!ちょっと来い!」
俺は、沙羅を休憩所に押し入れた。
「痛いー、ちょっと優しくしてよね!」
「うるせぇー!お前何で居るんだ!?」
「だから!心に逢いたくて来ちゃったぁ!」
「お前…」
沙羅は、ソファーに座り髪の毛の先をいじくりながら足を組んだ。
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