素直になれるまで…。
始めの頃は、もっと強気でちょっと強引だったように思う。


「今日空いてる?いいお店見つけたから、飯食いに行こうよ。」

「週末空けといて。〇〇に行くから。」

「弁当美味しそうだね。今度俺にも手料理食べさせてよ。」


その都度私のデスクまで来ては、彼はストレートに私を誘った。社内で人気のある人だったから、その言動は女性達に注目されていて、余計に目立ってしまった。


「あの…、今日は残業で…。」

「週末は用が…。」


周囲の視線を痛いほど感じながら、断りの言葉を小声で告げる私を無視して、彼は邪気の無い笑顔で私の髪を撫でながら、トドメの一言を爆弾のように投下する。


「じゃあ、楽しみにしてるからね。」


踵を返して私の部署から出ていく彼。それを追いかけるような、黄色い歓声と、私に向けられる冷たい視線…。

始めの頃は、そんな感じだった。
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