先生って言う名前の人

「、、俺は数学も教えれる」


先生はあたしの耳元で小さい声でそう言った。

ーーーー福野先生のこと?

「1問だけ教えてもらっただけだよ。
先生、お酒飲んだでしょ」


先生から少しだけウイスキーの香りがした。


「、、うん」

「それだけ言いに来たの?」

「、、違う」



先生はそう言ってあたしを抱きしめたまま、しばらく何も言わなかった。


もしかして、

会いに来てくれたのかな。


あたしが梨花に先生をとられたくないみたいに思ってくれてるのかな。


そう思うと急に恥ずかしくなった。


きっと赤くなってる自分の顔を先生の肩に乗せて、数学教えてね、と言った。


何も言わない先生の頭をよしよし、って言いながら撫でてあげた。



お酒の香りがする先生の体はいつもより熱くて、

先生の鼓動があたしの胸に響いて来た。



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