先生って言う名前の人
「渉くんおかえり」
おばあちゃんが先生にそう言ったのが聞こえてきた。
おばあちゃんは1階でさっきのことを先生に話している。
福野先生が財布を届けに来て危険を感じたから、先生のことを小さい時から知ってることにした、
もしバッタリ会ったら言い訳出来るように。
そんなハッタリをさらっと言うおばあちゃんに感心してると、階段を上がって来る足音が聞こえた。
あたしは気付かないふりをして画集に目を戻す。
すると、部屋の前でコンコン、と壁をノックする音が聞こえて、
先生はご飯ですよ、と笑って言った。
前にあたしがノックしてって言ったから?
あたしは嬉しくなって、久しぶりに家に来てくれた先生に飛びついた。
「やっと来てくれた」
「ごめんな、仕事が忙しくて」
先生はそう言って、いつもみたいにあたしの頭を優しく撫でてくれた。