先生って言う名前の人

なんだかどうしようもなくなって、

包丁を握る先生に後ろから抱きついた。



先生は少しびくっ、となったけど、
また何も言わずに包丁を動かした。


「、、、先生」


「、、どした」


「あたし、、華って言うの」


「知ってるよ」


、、そりゃ知ってるよね。担任の先生だもん。

毎日ご飯食べに来て、毎日迎えに来てくれたもん。


でもあたしは、青山とかお前とかじゃなくて
ずっと華って呼んで欲しかったんだ。


「、、、華って呼んでいいよ」


ーーーーいいよ、とか余計なことばを付け足して、
可愛くない自分に嫌気がさす。


「華、お皿出して」


でも先生はそう呼んでくれた。


あたしは嬉しくて、先生に抱き付く腕に少しだけ力を込めて、


聞こえないかも知れないくらい小さい声で
ありがと、って呟いた。



先生はいいにおいがした。


せっけんとか洗濯物とかシャンプーとか、


そんな感じの自然ないいにおい。

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