先生って言う名前の人
先生はまた梨花に借りた本を読み出した。
あたしにはお兄ちゃんじゃないって言うくせにーーーー
あたしは先生が大事そうに持ってる本を静かに閉じた。
「、、やだ」
「、、なにが?」
なにがって
全部やだよ。
梨花の本をあたしの前で読むのも、
梨花にはお兄ちゃんじゃないって言わないのも、
誰にでも優しいのも。
ーーーーあぁ、また涙が出てきた。
先生はあたしが泣き虫だから、めんどくさいから
お兄ちゃんになりたくないのかな。
「梨花のお兄ちゃんにならないで」
あたしの精一杯の本音だった。
でも先生は返して欲しい答えは言ってくれなかった。
「、、俺は誰のお兄ちゃんでもないし、みんなのお兄ちゃんでもいい」
あたしの頭を撫でながら、大丈夫、ひとりぼっちにはしないよって言ってくれた。
また優しくする。
でもこの人はあたしだけに優しいんじゃない。