先生って言う名前の人

ずっと頭を撫でて欲しいのに、

あたしは心と裏腹に先生の手を払いのけた。


「みんなのお兄ちゃんなんていらない!」


優しい先生に言い捨てて、階段を駆け上がって自分の部屋で泣いた。

先生はいつも2階へは上がってこない。
でも今日は上がってきてほしかった。


「華、帰るぞ」

下から先生が呼んでる。


でももしかしたら上がってきてくれるかも知れないと思って、返事をしなかった。


そのあと鍵かけとけよ、って言って、
玄関のドアが開いた。


先生は帰ってしまった。

あたしは泣きながら玄関に降りて、鍵をかけた。


走って追いかけたら、ごめんなさい、帰らないでって言えたのに。


梨花だったら言えるんだろうな。


あたしはこんなあたしが本当に嫌だ。

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