先生って言う名前の人
キス
次の日学校に行くと、教室のドアを開けてすぐのひとみの席に梨花とひとみが居た。
「華、おはよ」
「おはよう」
あたしは荷物を自分の席に置いて、梨花とひとみのところへ戻った。
「梨花、先生に貸した本にラブレター仕込んだんだって。
ほんとすごいよね」
「、、すごいね」
確かにすごい。
梨花はいつも自分に素直で真っ直ぐで、
意地っ張りなあたしとは大違いだ。
「もうすぐ先生来るんじゃない?」
ひとみがそう言うと、先生は本当にすぐ来た。
あたしは先生と梨花から目をそらした。
梨花は先生に向かって可愛くおはよ、と言った。
あたしにはそんなこと言えない。
「先生、本読んでくれた?」
「読んだよ。おもしろかった。
もう授業始まるぞ。教室帰らないと」
先生はそう言って梨花を廊下で待っている。
梨花はあたしとひとみに向かってじゃあまたあとでね、って言って
廊下に出てあたしたちに見えないように、教室のドアを閉めた。
「どうなるんだろうね、梨花」
心配そうなひとみは、廊下をちらちら気にしている。
ひとみはいつも梨花を応援している。
あたしも先生のことが好きって言ったら、
ひとみは困っちゃうだろうなあ。
素直で一生懸命な梨花に勝てるわけないのに、
あたしはまだ先生を独り占めしたかった。