今会ったばかりなのに、どうしてここまで汐帆ちゃんが気になるのだろうか…。




そんなことはいい。




そんなことより、今は汐帆ちゃんが不安にならないようにそばにいたい。







「大和、俺汐帆ちゃんの所に行く。



大和は…どうする。」







「俺は…。



とりあえず、今日のことをまとめてみる。」







「それなら、俺達がいつも使ってる仮眠室でも使えよ。


体は壊すなよ。」






「あぁ。ありがとう、陽向。」







「うん。それじゃあ、また後で。」







汐帆ちゃんの部屋へ向かうと、汐帆ちゃんの姿はなかった。





どこに行ったんだ…。






俺は、途端に頭が働かなくなって一気に真っ白になった。






あんな状態で、外にでも出たら…。






「楓!


今日運ばれてきた子見なかった!?」





「えっ、見なかったけど…。」






楓は、俺の2つ上の姉貴で、同じくここの病棟で働いている。






「私も探す。」





「助かる。」







とりあえず、トイレを1通り探したけど汐帆ちゃんはいなかった。






「汐帆ちゃん!!」


所々探したけど、汐帆ちゃんはどこの病棟にも行ってなかった。




まさかとは思い、最後に向かったのは屋上だった。





案の定、汐帆ちゃんは屋上にいた。






「汐帆ちゃん!」





「…」






汐帆ちゃんは、俺の声に振り向きもしなかった。





もしかして…。






俺は、汐帆ちゃんに近づき汐帆ちゃんの前に回った。






汐帆ちゃんは、俺の存在に気づき逃げようとした。






急いで汐帆ちゃんの手首を掴んだ。






手首を掴んだ瞬間、汐帆ちゃんは思いっきり振り払った。







「声が出せなかったのは、そういうことだったのか…。」





汐帆ちゃんは、産まれた頃から静かな音が何も聞こえない世界に産まれてきたのか…。





だから、俺の問いかけにも反応しなかったのか。






原因は、それだけじゃないんだろうけど…。





もう少し、汐帆ちゃんを観察するべきだった。






汐帆ちゃんは、持ってたスケッチブックを俺に見せた。






『病室にはちゃんと戻ります。』







きれいな字でそう書いた。







「雨が、少し降っているから風邪ひいたらいけないよ。

病室に戻ろう。」





胸ポケットに入っていたメモ帳を取り出し、急いでそう書いた。






彼女は、それを見て何も言わずに頷いた。


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