天神の系譜の奇妙なオムニバス
何もない、自警団本部。

教室の突き当たり、窓際に2人の人物が立っていた。

「えっ…」

古奈美が声を上げる。

「近藤 敢団長…ですか…?」

「ああ」

長身の男が、薄笑いを浮かべて頷く。

「俺が、貴様ら自警団の隊員達が信望していた近藤 敢だ」

「……」

その言葉、信じ難く。

古奈美は言葉を継げない。

だって近藤団長は、いつも帯刀していた。

近藤団長は、あんなボサボサの黒髪じゃなかった。

近藤団長は、インバネスコートなんて着ていなかった。

近藤団長の得物は、二挺拳銃なんかじゃなかった。

「それは、古奈美さん達が見せられていた幻術です」

近藤を名乗る男の傍らに立っていた、セミロングの少女…橘 ベルが言った。

「彼は幻術を駆使して自警団の団長を演じ、貴方達を指揮していたんです…ヴラド学園長の体制を覆すという目的の為に」

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