天神の系譜の奇妙なオムニバス
大浴場。

離宮の浴場は、ここだけで芸能人の披露宴が行えそうなほどの広さがある。

お約束のマーライオンみたいな大理石の石像からは湯が流れ出す。

ライオンだけかと思ったら、向こうにはドラゴンの石像もある。

あっちからも湯が延々と流れ出している。

泳げる。

泳げるぞこの風呂。

無駄に豪奢な離宮は落ち着かないが、リュートはこの大浴場は嫌いではなかった。

足の伸ばせる風呂というのは悪くない。

「着替えは同じ『空手着』な。オフクロが着せたがってる、あの貴族風のヒラヒラした服だったら着ねぇぞ」

お付きの侍女に言い含めて、リュートは躊躇いもせずに汚れた空手着を脱ぎ捨て、大浴場に入った。

白い湯気で煙る大浴場。

ペタペタと足音を立て、リュートは歩く。

まぁ、確かに汗を掻いて気持ち悪かった。

ひとっ風呂浴びるのもいいだろう。

大浴場の一番奥、一際大きな湯船に浸かろうとして。

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