天神の系譜の奇妙なオムニバス
将軍は死に、多くの兵が敗走、または投降した。

それで尚、戦が終わっていないというのか。

幕府軍は崩壊している。

「否、貴女が生きている。古奈美姫」

感情を感じさせない眼が、古奈美を見つめる。

結界は反応しない。

「慶晃公の正統な血を引く貴女が生きていれば、幕府はまだ存続できる。士気を高め、兵を立て直し、再び維新政府に仕掛ける事が出来る。いや…貴女さえいれば、見廻組だけでも維新政府軍に対抗する」

「何を馬鹿な…」

古奈美は絶句するしかない。

「私を将軍の代わりに担ぎ上げてまで、貴方達はまだ戦を続けたいんですか!」

「左様にございます」

感情を感じさせない眼が、冷徹さを帯びても尚、結界は反応しない。

「幕府は潰えてはいない。我々は負けてはいない。生きている以上、我らこそが幕府なのですぞ、姫」

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