天神の系譜の奇妙なオムニバス
「貴様は維新政府軍だろう?幕府とは敵対関係にある。そして姫は勅使河原幕府将軍の娘だ。何故守る必要があるのか、それが解せぬ」

沖田に問い掛ける見廻組の隊員。

「幕府から金を貰って寝返ったか?幾ら貰った?ヒノモトで人斬り鬼と恐れられた貴様を飼いならすには、幾らあれば足りる?」

その言葉で、沖田に嘲笑を浴びせる他の隊員達。

「そうですね…」

沖田もつられて笑う。

「僕も思いましたよ。割に合わない仕事だって。勅使河原さんの命を守った所で、人殺しだ何だと罵られて終わりの、何の得にもならない仕事だと思っていました。僕を飼いならすには幾らあれば足りるか、ですか?」

沖田は、掌で頬を撫でる。

「拳骨一発です」

「何?」

訝しげな顔をする隊員達。

「お金なんていらない。腹を割って話せる友達と、本気の拳骨一発あれば」

沖田は清光を抜き放った。

「僕は報われない護衛だって命を張れるんです」

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