天神の系譜の奇妙なオムニバス
荒れ狂い、ベルを傷つけた犯人を探して大股で歩き回るダンドリッジ。

もう倒れて戦闘不能になった隊員さえも、胸倉を摑んで引き起こして問い詰め、違うと分かれば放り投げて壁に叩き付ける暴虐ぶり。

「ダン」

「何だっ!」

「ダンってば」

「何だと訊いているっ!」

「もういいよ」

「何がだっ!」

激しい怒りを露わに振り向いたダンドリッジを。

「傷は治るから。止血も済んだから。ダンの大好きな血は、もう流れていないから」

ベルは微笑みと共に宥めた。

「……」

暴風が突然凪いだかのように、冷静さを取り戻すダンドリッジ。

「…いい従者だね、ダンは」

「…今夜の晩飯が惜しかっただけだ」

背を向けるダンドリッジ。

「大丈夫よぅ」

ベルはヨロヨロとダンドリッジに歩み寄り、彼に寄りかかった。

「今夜もちょっとくらいなら、血を吸っていいから」

「…貧血で倒れられたら迷惑だ。今夜は要らん」

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