天神の系譜の奇妙なオムニバス
ダンドリッジの乱入もあり、見廻組隊員は粗方片付いたようだ。

ポタポタと切っ先から滴る血を、沖田は振り払った。

…後ろめたそうに、振り向く。

リュートの傍ら、古奈美はその姿を見つめていた。

一礼して、立ち去ろうとする沖田。

「沖田さん!」

古奈美は彼を呼び止める。

「助けに来てくれたんですね…有り難うございます」

「いえ…」

目を合わせられない。

感謝さえされる資格はない。

人を殺した人間が、何故美しく清らかに生きてきた者に感謝をされるのか。

無論、この戦いでは見廻組を誰1人として殺してはいない。

だが、今更不殺を貫いたとて、過去の罪は消えない。

人殺しには変わりない。

「あの…」

古奈美は、おずおずと切り出した。

「沖田さんも…私が勅使河原幕府将軍の娘だという事を知っていたんですか?…だから任務で、私を守って…?」

「それは…」

言いかけた沖田を阻むように。

「任務に決まってらぁ」

リュートが言った。

「自警団として、『仲間』を守るのは任務だからな。沖田はどこの誰だろうが、『仲間』は守るんだよ。なぁ?」

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