天神の系譜の奇妙なオムニバス
真太郎が沖田と知り合ってから、まだ日は浅い。

野暮用で久し振りに天神学園を訪れた時、体育倉庫の裏で、巻き藁に一心不乱に打ち込みを続けていたのが彼だった。

このご時世に、血の匂いのする男だった。

決して邪剣ではないが、人斬り働きをしてきた男である事はすぐに分かった。

このまま放っておけば、夕城流を破門された当時の己のように、堕ちていくしかない事も。

ヒノモト製の鈍ら刀しか持っていなかった沖田に、真太郎は加州清光を与え、僅かばかり夕城流の手解きもした。

沖田は一週間ばかりで、夕城流極意『斬鉄』を習得。

それは、新生琴月流宗主の琴月 孔雀を思わせるほどの天才ぶりだった。

真太郎は彼に言った。

その清光が使い物にならなくなったら、また夕城邸の門を叩け。

もっといい刀をくれてやる、と。

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