天神の系譜の奇妙なオムニバス
蛮はそのルナの申し出に応じた。

どうせこのまま戦い続けても勝つ目はあるまい。

ならばおとなしく、この天神の地で暮らすのもひとつの手段。

差し伸べられたルナの手を握り締め。

…蛮はルナの眼前に銀製の十字架を突き付ける。

無論効きはしない。

ルナほどの吸血鬼に、今更十字架など嫌悪感さえ与えない。

だがこの時、この瞬間こそ、ルナが初めて蛮に虚を突かれた瞬間だった。

名門ツェペリ家の娘が、未熟者のヴァンパイアハンターに虚を突かれる。

致命傷でなくとも、敗北に等しい。

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