天神の系譜の奇妙なオムニバス
ヴラドは吸血鬼自慢の牙を見せてニヤリと笑いながら、古奈美の方を向く。

「どうする勅使河原。この男は聞いての通り放蕩亭主の素質を備えている。婿に貰った所で将軍家の再興は夢のまた夢だ」

「て、亭主だなんてっ…それに…」

古奈美は頬を赤らめながら俯く。

「将軍(ちち)のもっと前の代からあった政略結婚なんて、私は興味ありません…私も、リュート君も、私の後の代も…政(まつりごと)には関係なく、本当に好きな人と結ばれてほしいと思います…」

「国や御家よりも感情に任せるか。天下人に向かんな。勅使河原幕府が滅びる訳だ」

「っ!おい!学園長テメェ!」

ヴラドの発言にリュートがカッとなるが。

「ヒノモトは維新政府が掌握した。勅使河原の思惑通りに、政略結婚などという古い因習は廃れていくだろう。新しいヒノモトの夜明け、という訳だな」

リュートなど見向きもせず、ヴラドは汁気を落としたチャーシューを口に運んだ。

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