天神の系譜の奇妙なオムニバス
「長旅ご苦労だったな。茶でも飲むか」

「いえ、お気遣いなく…」

そんな言葉を交わし、2人は座布団に座った。

「…いい娘になった。儂が初めて見た時は、ほんの童(わらべ)だったが」

「まだ、戊辰大戦も始まる前でしたね」

東郷の言葉に、微笑む古奈美。

「…矛を収めて頂けませんか」

古奈美は言う。

「そう言えと言われたか。大久保辺りに」

「いえ」

「では誰に?」

「私自身の意見です」

真っ直ぐに東郷を見つめる古奈美。

「東郷さんは、この国に必要な人物です。どうか内務卿にお力添えして頂けませんでしょうか」

「断る」

東郷は即答だった。

「士族を蔑ろにし、隅へと追いやる政府には従えん」

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